神島に1時間半滞在。
帰ってきて、また1時間、朝陽に輝く灯塔を眺めた。
潮はかなり引いていた。 撮れるだけの写真を撮った。
それからおもむろに、車を走らせて、
昔懐かしい伊良湖のあちこちに立ち寄った。
35年の風雪の間に、様変わりしている場所も、
昔のままの場所もあったが、信じられないことに、
どこも私を迎え入れる雰囲気が感じられなかった。
伊良湖に居た1年余、青年らしく振舞ってはいたものの、
その時期は、私にとっては失意と挫折感の期間で、
体は伊良湖に置きながら、
心は伊良湖にはなかったのかも知れない。
「追懐の伊良湖」
は、想い出の場所には相違ないけれど、
もう、縁遠い場所になってしまっていた。
今の私に伊良湖で繋がっているのは、岬の灯台だけ、だ。
そのことが分かっただけでもいい。
次に来るときは、伊良湖岬灯台だけを訪ねる目的で来よう。
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いらこみさき
A 午前 |
2507 [F6052]
北緯 34°34' 34", 東経 137°01'
09"
白色 塔形 コンクリート造
4等 等明暗白光 明3秒暗3秒
17,000カンデラ 光達 12.5海里(約23km)
地上〜灯火:14.8m、水面〜灯火:16m
初点 昭和4年11月20日 |
洗濯ダンス
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かみしま
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2504 [F6051]
北緯 34°32' 44", 東経 136°59' 21"
白色 上部円形下部四角形 コンクリート造
第4等 群閃白光 18秒を隔て12秒間に3閃光
76,000カンデラ
光達 20海里(約49km)
地上〜頂部:11m、水面〜灯火:114.1m
初点 明治43年5月1日 昭和42年3月 改築 |
神島への連絡船は朝6時発。 あの島に渡る!
神島は、小説 「潮騒」 では 「歌島」
として舞台となっている。
映画化されたのは5作品で、2作目は吉永小百合、4作目は山口百恵が主演した。
その時代の人気女優がヒロインを演じるのでは
「伊豆の踊り子」
と似ている。
小説には神島灯台はもちろん、足踏みの洗濯場までが登場する。
洗濯場の傍に通りかかったら、二人の女性が洗濯ダンスをしていた。
カメラを向けて
「撮っていいですか」 と聞いたら顔を上げるから、「顔はいいです」。
言い方が悪かった!
と思ったが、二人はそれを気にする風も無く洗濯を続けていた。
湊から灯台までは100m近い坂道を登りつめ無ければならない。
昨日の山歩きでくたばっている身には、100mの上り坂は辛かった。
平坦路になってから波止場を見下ろしたら、モヤって見えなかった。
灯台も、時折モヤに包まれて、水道を行き交う船の霧笛が絶えなかった。
この遊歩道の角を曲がったら、もう、灯台は見えなくなる
また来るまで、さらば!
だ。
35年前のことだが、渥美半島の先端 ・ 伊良湖岬に1年余いた。
私の人生で最大の転機を迎えたときだ。
伊良湖は 「いらご」 と読む。
私たちは 「いらこ」 と呼んでいた。
灯台表では Irago Misaki だが、
私には今でも、伊良湖岬灯台は 「いらこみさきとうだい」
だ。
伊良湖に居た1年余で、
灯台には二度か三度訪れているはずだが、記憶に無い。
灯台に興味を持ったのは、それから33年後、だから。
灯台に興味を持つまで、伊良湖岬の灯台がどんな形で目に触れようと、感慨が沸かなかったし、懐かしささえ浮かばなかった。
胸中穏やかでなくなったのはこの2年だ。
灯台好きの間で、伊良湖岬灯台はかなり人気のある灯台らしい。灯台に関連したHPやブログで折に触れて目にする。
「伊良湖は私の大事な場所」
と公言してきた私なのに、
灯台の写真も、想い出も、記憶さえも無い!
これは由々しき問題だ
(笑)
人様が撮った伊良湖岬灯台の写真を見るたびに、
情けなくて、忸怩たるものがあった。
対岸の鳥羽のフェリー乗り場に到着したとき、
伊良湖岬に渡る伊勢湾フェリーの最終便は出た後だった。
明朝8時10分の始発便を待つしかない。
そうすると伊良湖岬到着は9時過ぎだ。
早朝行動派の私が、それまで待てるわけがない。
伊良湖岬にいれば、朝6時の船で神島に渡れる。
それよりも何よりも、伊良湖岬に一刻も早く着きたい。
そこで私は愚挙とも言える暴挙に出た。
鳥羽で朝まで待つくらいなら、
伊勢湾岸を大回りして伊良湖岬まで走れ!
と。
午前中の山歩きで疲れ切っていたけど、
眠気は無く、神経は張り詰めていた。
日付が変わらないうちに伊良湖岬に到着。
寝場所はターミナルの駐車場だ。
途中のコンビニで買ったビールも飲まずに寝た。
4時半に目が覚めた。 まだ暗いが、灯台の方向に歩き始めた。
やっと
「幻の灯台」 との対面が叶う。
私の感覚では 「初対面」 だ。
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いらこみさき
@ 未明 |
2507 [F6052]
北緯 34°34' 34", 東経 137°01'
09"
白色 塔形 コンクリート造
4等 等明暗白光 明3秒暗3秒
17,000カンデラ 光達 12.5海里(約23km)
地上〜灯火:14.8m、水面〜灯火:16m
初点 昭和4年11月20日 |
伊良湖岬は、私にとって特別の地だから、
特別の思い入れがあった。
思い入れが強すぎたのか、30年ぶりの再訪だというのに
これといって何もこみ上げてこなかった。
それに代わって、30年前には見向きもしなかった灯台が、
今は私の心の中に、デ〜ンと鎮座まします。
B 追懐の海 伊良湖水道の灯台