これまでの灯台めぐりで、最初から敬遠した (離島等の) 灯台はあっても、道のない道を進みながら途中で断念した灯台はない。
それだけに、白ノ鼻灯台訪問の頓挫は、コタエタ。 興津埼灯台に向けて運転する車のハンドルの、なんと重いことよ!
その道中がまた長い! 興津埼へは国道56号から分かれて県道に入るのだが、県道という名の「険道」 だ。
私にとってはタブーだけど、運転しながら、「俺は、なんで、こうまでして灯台に行くのだろう?」と愚かしい自問自答をした。

興津埼は海抜220mの三崎山の先端だが、灯台は山の中腹を過ぎたところにある。麓からは見えない。
灯台がある、と思しき近くにアンテナの鉄塔が見えるから、きっと工事用の車道は通じているはずだ。歩いて170mは登れない。
何人もの人に道を聞いた。 道を聞く、というよりも、車でいけるか? と。 ご年配のおばちゃんまでもが「行ける」 とおっしゃる。
但し 「道は悪いよ」 と付け加えて。 このひと言が、よそ者の私を不安にさせる。

結論として、灯台の門まで車で行けた。 無事に帰ってきた。 でも、二度と行きたくない、一人では。
苦労してたどり着いたご褒美か、灯台は見ごたえがある。 堂々たる灯塔で、灯屋だ。レンズも、光達距離も大灯台だ。
しかし、灯台守の方は苦労なさったろうな、と思う。 この、細くて曲がって荒れた長い山道だ。最大の業務は道路からの転落防止だ。
わが愛車 ・ 灯台巡回車1号は、私のつたない運転によく耐えてくれた。
興津埼灯台
灯台番号 3079 (F5598)  北緯 33 09 08 東径 133 13 12
塔形 白色 塔形 コンクリート  灯質 4等 群閃白光 11秒を隔て4秒間に2閃光
光度 250000 カンデラ  光達距離 38 海里
初点 S 26-8-31   塔高 14  灯火海抜 187
地図   興津埼の山上、170m 車道あり(狭小)  柵・扉なし
私のうろ覚えの記憶では、桂浜は浦戸湾口の西側だから、室戸方面から行くには高知市街を通過しなければならないと思っていた。
ところが、35年も前に浦戸大橋ができていたのだ。 この種の勘違いは、カーナビを取り付け、その正確さに全幅の信頼を置いてからだ。
私の灯台めぐりは、まず、訪ねたい灯台の地形図を見る。 次に灯台への取り付き口から灯台までの車道や小径を確認する。
車でいける地点をカーナビに入力したら あとはカーナビ任せ。 道路地図を見なくなった。昔は地図さえあれば怖いものはなかったのに。

高知灯台は道路の脇にあるのに、樹木の茂みで見つけにくかった。 所在を確かめるために桂浜まで降りて確認する始末。
灯台名に岬や島の名前がつかないから、ロマンを掻き立てるには縁遠い灯台だ。 かつての 「竜頭岬灯台」 を継承していればよかったのに。
灯台そのものは端正で、塗装もきれい。 近くにある竜馬の像よりも、堂々としている。敷地からの展望がよければ観光スポット?
公園化された一帯を訪れる人は多くても、くもの巣の張り具合からは、灯台を訪れる人はいないみたいだ。別に構わないが。

宇佐大橋を渡り、横浪黒潮ラインに入るとすぐ、白ノ鼻灯台がある。 地形図では、灯台に至る小径さえも表示されていなくて、
どうなる事かと危惧していた灯台だ。 折りよく、土地の方に出会い、道を聞いた。登り口は分かった。 登山路もしばらく続いた。
中間点付近で登山路が消えた。 尾根を歩いた。 時折の電柱と電線が頼りだ。相当歩いた地点で電線が直角に曲がっている。
その方向を見やると木の葉の間から灯台が見える。
でも道がない。 「藪漕ぎ」 は特異だがTシャツでは! 諦めた。 口惜しい。
高知灯台
灯台番号 3044 (F5594)  北緯 33 29 34 東径 133 34 32
塔形 白色 塔形 コンクリート  灯質 単閃白光 毎5秒に1閃光
光度 900000 カンデラ  光達距離 19 海里
初点 M 16-6-1 S 46-3 移設   塔高 15.5  灯火海抜 50.3
地図  行ってしまえば簡単、見つけるのが大変  塀・扉あり
室戸岬燈台の初点プレートを写す、という2年越しの夢がかない、最御崎寺の駐車場で眠る (2年前の再現だ) ことも考えたが、
祝杯もあげたいし、 何よりもカメラの充電をしておきたかったので宿を探した。
室戸市で 「とさ」 という名の お食事処・宿泊 の看板を見つけ、宿泊することに。予約なしの宿泊だから夕食は諦めていたが、
お食事処 を看板に出すだけあって、きちんとしたセット料理が供された。 しかも安い。 これから、2年に一回の室戸岬詣ででは定宿にする。

早起きは三文の徳、だ。5時半に動き始めて、6時には羽根埼灯台の麓に着いた。石松氏も、 hide さんも苦労して登っている斜面がある。
折りよく、軽自動車が通りかかった。 登り口を確認する私に、「灯台まで車でいける。途中まで連れて行ってやる。ついて来い」 
教えられた道を不安げに運転していると、土地の人にすれ違い、不安になってUターンすると、また人に出会った。
今までの経験から、早朝の人里はなれた灯台近辺で、3人もの人に出会い、そのたびごとに道を教えられ、灯台にたどり着いた記憶はない。

四角い塔柱の上に半円の灯室が設けられた、北海道で見かけたパターンだ。 灯台らしくない、と評判はよくないだろうが、これも灯台だ。
再訪したくなる灯台ではなかろうが、それは塔形からではなくて、灯台に至る道の難解さからだ。
それ故に、出合った人たちの親切はありがたい。 しかし、こんなケースは滅多にない。灯台めぐりはたいがい人に出会わない心細い行為だ。
朝から気分を良くして高知へと向かう。
羽根埼灯台
灯台番号 3033 (F5592)   北緯 33 22 09 東径 134 02 29
塔形 白色 コンクリート   灯質 群閃白光 毎20秒に2閃光
光度 260000 カンデラ  光達距離 23 海里
初点 S 28-5-8   塔高 11.3  灯火 78.1
地図  灯台は見えるが、登り口は坂本集落のはずれ  柵・扉なし
海岸の地形に 「海岸段丘」 がある。 典型的な例として室戸岬がある。 地理の授業で、そう教わり、立場を変えて、そう教えてきた。
でも、私自身は室戸岬を見たことがなかった。 講談師ではないが、地理教師 見てきたような話をし、だ。別に 恥ずかしいことではない。
日本地理と世界地理では、見たこともない街や地形や産業の話をするのは当たり前だが、私はそれがいやだった。
地理の授業とは無縁の生活が35年続いたが、室戸岬の海岸段丘だけが、何故か、のどに引っかかったままの骨だった。

2年前の冬、夕方家を発って室戸岬の 最御崎寺 に夜中に着いた。 岬には 灯台があることを思い出し、朝まで待って灯台を訪れた。
最御崎寺の坂道を登った私を、日本一の大口径巨大レンズが点灯したまま迎えた!目線の高さで!
10秒に一度、直射を受けるたびに、一瞬、冬の未明の周囲の温度が上昇した。灯台の素晴らしさと灯火の凄さを知った。
そのときの私は、灯台の周囲に張り巡らされた柵と扉は、乗り越えたり、すり抜けたりしてはいけないものだと思っていた。

満を持して再訪した今回、撮りたくて仕方がなかった初点プレートをカメラに収めた。2年かかった。
落日に染まる灯塔を撮り、薄暮の下の灯台を写し、2年前に度肝を抜かれた巨大なレンズに灯りが点るのを待った。
灯りはジワ〜っと点ると予想していたが、6時8分、前触れもなくボゥっと点った。2年前は消灯前の灯り、今回は点灯時の灯りだ。
私を灯台ファンにしたのは室戸岬灯台だ。 以来、150基の灯台を訪れた。 それでも、室戸岬灯台だけは別格だ。
室戸岬灯台
灯台番号 3027 (F5586)   北緯 33 14 38 東径 134 10 42
塔形 白色 塔形 鉄造  灯質 1等 単閃白光 毎10秒に1閃光
光度 1900000 カンデラ  光達距離 30.5 海里
初点 M 34-4-1   塔高 15.4  灯火海抜 154.7
地図  二十四番最御崎寺の横の坂道  柵・扉あり
日没を室戸岬灯台への
坂道で見た
甲浦灯台
灯台番号 3020 (F5584)  北緯 33 32 20 東径 134 18 17
塔形 白色 上部円形下部八角形 レンガ造  灯質 5等 等明暗白光、明3秒暗3秒
光度 21000 カンデラ  光達距離 18 海里
初点 M 17-12-20  塔高 8.2  灯火海抜 41.5
  甲浦港フェリー乗り場横に登山路  柵あり・扉なし
おきつさき
見えても行けない白ノ鼻灯台
こうち
はねさき
むろとさき






























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蒲生田岬から室戸岬まで、海岸線は長い。 途中に、訪問リストに加えるべき灯台は3基ある。
しかし、蒲生田岬灯台で手間取り、日没までに室戸岬に到着するには時間がない。3基のうち2基を割愛する決断に迫られた。
往復1時間の山道を強いられる阿瀬比ノ鼻灯台と、「これからの時間では無理だ」と教えられた阿波竹ヶ島灯台をパスする。
見送った2基は下関から一番遠い灯台で、改めて再訪する事はなかろう。 無計画の計画を立てた私を、自分で責めた。

阿瀬比ノ鼻灯台には hide さんが訪れており、共通の話題にするためにも行きたい灯台だった。
阿波竹ヶ島灯台は、西日本で唯一、赤い帯を巻いた灯台だ。 赤帯を巻いた巌流島灯台がなくなった今、行って見たい灯台だった。
断腸の思いでパスした2基への想いは、いやがうえにも甲浦灯台にのしかかるが、明治17年に唐人ヶ鼻灯台として建てられ、
大正2年に移設された甲浦灯台だ。 5等のレンズは、レンガ造りの灯塔に載せられている。期待に応えてくれよう。

甲浦港はフェリーが廃止されて、うら寂しい港町だ。 かつては劣悪な道路事情から、高知へはの船便が便利だったろうが、
一応の整備がなされれば、船便は消え行く運命にある。 カタチばかりのフェリー桟橋の名残がある傍らに、登山路がある。
迷わない程度の道はついているが、敷地は草ぼうぼう。 そこに古色然とした灯台が立っている。貫禄は、ある。
初点プレートが掲げられていたであろう形跡は残っているが、今はない。 壁面のレリーフが大正期を思わせる。いい灯台だけど‥‥。
かんのうら
甲浦灯台
室戸岬灯台
羽根埼灯台
高知灯台
興津埼灯台
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室戸岬から土佐湾 足摺岬から宇和海 佐田岬半島の灯台
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 追補 四国東岸 

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